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お坊さんの小話(法話)
〜浄土真宗〜

其の八-二
【企業戦士の哀愁】
[2002/07]

 ひょんなことから、ある防水メーカーの総会で講演をする事になった。

 彼らは、いわゆる企業戦士である。が、最今の状況は彼らから、鎧、兜をはぎとり生身の人間へと変貌させている。

 そんな彼らへの講演は私を悩ませた。話しをすすめる中で、彼らに受け入れられたのは以外にも最も身近なこの話であった。

 「最近のホテルは便利になったもので、体ひとつでも一泊の出張くらいは困らなくなっている。しかし、その便利さが、社会の最小単位の夫婦の間をも壊していく。

 私の友人の話である。急な出張で大阪へ…妻に荷物の準備を頼み、あれこれ注文をつけると『あーいじっかしい。自分でしまっし、向こうのホテルに何でもあるわいね』と言われてショックを受けていた。

 不便な時代、夫が準備をした荷物を見た妻が、暑くなりそうだからと替えのシャツを一枚よけいにいれたり、カゼ気味だからとカゼ薬を入れたり気をつかってくれたものだった。夫も旅先で、荷物の中に妻の思いやりを感じ手を合わせたものだった。

 昔は確かに色々な面で不便ではあった。が、家の中には、思いやりがあふれていたのではないだろうか。子ども達も母親も便利さに慣れ、余った時間を家族の為に使うのではなく外へ求めるようになっている。不便に戻れば良いというのではないが、せめて家の中では思いやりを感じた昔を思い出してもいいのではないだろうか」と。

 今、四十代五十代の社会的にも安定した時を生きているはずの彼らは、生身になって、今にも血を流しそうになっているのではないだろうか。だからこそ、この話を最も受け入れ、自分達に必要な何かを感じたのであろう。

 それにしても最近は男性の方が気弱になっているのか?街の中では彼らの奥さんのような年代の女性が、男達の苦労など、我感せずというように元気である。そんな彼女たちを見るにつけ、「もう少し、家族の為に必死で頑張っているお父さんに気をつかってやってください」と願わずにはいられなくなる講演だった。

合掌

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