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お坊さんの小話(法話)
〜浄土真宗〜

其の三十八
【歯医者と喫茶店3】
[2010/04]

 小学校生のころ。同級生に、市の衛生車(便の汲み取り)の仕事している父親を持っている子がいた。当時は今のように水洗トイレではなかったので、どの家庭も、市から衛生車がきて長いホースで便を車についているタンクに吸い取っていた。いつの時代でも、いじめっ子はいるもので、あるとき、親の仕事のことでその子にひどい言葉を投げ掛けていた。その言葉を聞いた担任の女の先生が、ひどい言葉を投げ掛けた男の子たちを並ばせ、目に涙をためながら、頬を平手打ちし、叱った言葉が今でも忘れられない。『どんな仕事でも、世の中に必要のない仕事なんてありません!〇〇ちゃんのお父さんが仕事してくれているから、あんたたちは毎日トイレにいけるんでしょうが!はずかしいのはあんたたちです!思い違いしなさんな!』…今思えばこれぞ教育(育て教える)という言葉だった。

 仕事や物事や人物、その他様々な事柄を、綺麗なものは良し、きたないものはダメ!楽なのは良しで辛いのダメ!地位が高ければ良しで、低いのはダメ等々!こんなふうに判断しているのが私たちの日常ではないだろうか。だから、えてして平気で意識せずに簡単に、喫茶店のご婦人のような言葉を言ってしまう。故に仏教には『中道』と云う言葉が用意されている。中道とは2つの対立し矛盾する思いに固執したり、偏(かたよ)らないことを言う。『綺麗・汚ない』『楽・辛い』『高い・低い』これら対立する思いに偏らない。ものごとの本質をしっかりと見抜くこころ!さらには、偏った考え方になっている自分に気づくこと!それが中道といえる。私たちは絶えずこの中道を意識していなければ、仕事の貴賓を意識したり、地位や名誉やその他諸々のくだらない価値観に惑わされ魅了されてしまう。

 本当に大切なものは何なのか、本当に敬意をはらわなければならないのは誰なのか、そして今、生きている自分はひとりで生きているのではないという自覚、ひとりで生きてきたのではないという自覚は、この中道なくしては見えてこないのではないだろうか。

合掌

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