其の九十九
【 続・新型コロナウィルス緊急事態宣言 人(ひと)が人(ひと)であるために 】
ウィルスは、この新型コロナウィルスは人を死にいたる病にするだけではない。
この新型コロナウィルスは、病だけでなく、もう1つ恐ろしいものを感染増幅させていく。
それは、感染が広がるにつれ姿を三段階に変えていく。
第一段階。
「身勝手」
他人の迷惑をかえりみず自分の都合だけで行動したり、考えたりすることから始まる。
レポーター『緊急事態宣言で自宅での自粛要請が出てますが!』
男性A『要請でしょう。強制じゃないじゃん』
新聞記者『飲み会。三密になるんじゃないですか?』
男性B『だって飲みたいじゃないですか!』
女性A『飲んだら次はカラオケって決めてるから!そういうもんだから』
その他に、
『だって家にいたって暇だから』
『だってすることがないから』
だって…!
だって…!
だって…!
これが身勝手である。
第二段階。
ウィルスがだんだんと蔓延していくと、身勝手は『自己愛的ご都合主義』に進化する。
自分だけが大切で自分を守るために、その時々当人の都合にあわせて言動や行動をするようになる。
男性A『自粛、自粛って、どこも店閉めて。食べにも行けん。ピザでも取るか』
ピザ宅配店員『ピザをお届けに上がりました』
男性A『お前俺にコロナうつす気か!近寄るな!』
ピザ宅配店員『………』
宅配業者『○○○○からのお荷物です』
男性B『コロナうつるやんか!荷物置いて近寄るな!』
宅配業者『サインか判子を』
男性B『あっちに行け』
宅配業者『あなたが頼んだ品物ですよ』
男性B『コロナにうつりたくないからネットでたのんだんや!』
『近寄るなうつる!』
これが自己愛的ご都合主義である。
最終段階。
さらにウィルスが蔓延すると、自己愛的ご都合主義は『修羅』へと変貌する。
我が身可愛さのあまり、怒りと疑心に凝り固まり人としての優しさや思いやりを失っていく。
たとえば、感染した患者やその家族が、自分と同じマンションに住んでいたなら、そのマンションを出て行けと攻めたてる。
病気を発症した患者さんを治療している医師や看護師さんを、コロナをうつすからと、近寄るなと攻め、タクシーならば乗車拒否!
引っ越しならば依頼拒否!
スーパーの買い物ならば入店拒否をする。
新型コロナウィルスが、そのウィルスとともに運んでくるもの。
増幅させるもの。
それが最終段階の『修羅』にまで変貌したなら…。私たちはもう、コロナに感染しているとか感染していないとかにかかわらず、『人(ひと)』ではなくなっている。
人 (ひと)ではない存在!
それを日本では鬼!と呼び、西洋では悪魔!と呼ぶ。
鬼も悪魔も、それは人の心の姿なのである。
そして鬼も悪魔も、誰の心にもやどっている。
もちろんこの小話を書いている私にも。
だからこそ、気をつけなけれはまならない。
だからこそ、人(ひと)でいつづけなければならない。
だからこそ、鬼や悪魔に心をうばわれた存在『修羅』になってはいけない。
人間は他者を信じられるから強いのである。
生きていけるのである。
人間から信頼を取ったら、人間関係はもろくも崩れ、社会は簡単に崩壊してしまう。
絵空事ではない。
現実に、歴史は示している。過去に魔女狩りはおこなわれ、日本では村八分の制裁があった。
2020年の現代でさえ、魔女狩りに似た犯人探しや、自分を正当化するための弱いものいじめ。または村八分的な無視や嫌がらせはおこなわれている。
『修羅』は確実に人間の中に存在する。
だからこそなのである。
修羅にならない方法はある。
しごく簡単な方法である。
それは、新型コロナウィルスに感染した人は、明日の『私(自分)』であると想像してみること!
それは、新型コロナウィルスに感染した人が、『私(自分)』の夫や妻、子供や両親だと想像してみること!
どうだろう?
魔女狩りの生贄、村八分の餌食に自分や自分の家族がなるのである。
あなたは耐えられますか?
仕方ないと受け入れますか?
理不尽だと怒り、差別だと全力で訴えるはずです!
簡単な話しである。
自分が、家族が、魔女狩りや村八分にあわないために、自分が行わないのです。自分が修羅にならないのです。
どうか人 (ひと)でいましょう。
どうか修羅にならないようにしましょう。
もし自分が修羅になったなら、確実に次はあなたや、あなたの愛する大切な人たちが、魔女狩りや村八分にあうのです。
新型コロナウィルスは、ウィルスとともに、人間のなかに潜む、鬼や悪魔を増幅し、人(ひと)を人であらざるもの『修羅』に変えるのです。
人であらざるもの修羅は、簡単に魔女狩り!と村八分!を生んでいきます。
そして、そのことが、新型コロナウィルスの本当の恐ろしさかもしれないのです。
どうか!
どうか!
くれぐれも!
くれぐれも!
人(ひと)でいるように心がけていようではありませか!
私自身! 固く心にきざみこんでいます!
合掌
[2020/04]
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